バラ色の手紙

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新しい文具をおろす時は、幾つになっても心が躍るものだ。
老舗インクメーカーのR社が開発した『世界で一番美しいインク』。英国は王立バラ園のイングリッシュローズから抽出された万年筆用のインクで、ひとたび筆を走らせれば、摘みたての花びらの様な艶やかな色と、得も言われぬ香りが紙の上に花開くという。

さて、どのバラを咲かせようか。香水を選ぶ様に、棚に並んだインク瓶を指が往復する。赤、黄、橙に桃色、紫や色の混じった変わり咲きもある。一万を超える銘柄それぞれに色と香りが違い、趣味人なら文字を見るだけで品種が分かるそうだ。
とっておきの紅茶でアフタヌーンティーを楽しみながら、まっさらな便箋に万年筆が刻む心地良い音を聞く。
ふくよかな甘さに彩られた白紙の封書を受け取って、ラジオの向こうの彼女は、私の遊び心に気付くだろうか。
白バラの最高峰ともうたわれる、クレア・オースチンのインク。文面は、紙のみぞ知る。
ミステリー・推理
公開:22/05/30 17:15
月の音色 月の文学館 テーマ:バラと万年筆

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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☆SSGと皆様のお陰で生まれた本たち
短編集『ショートショート・アソート』Ver.0~5
選集『花神の庭』
詩集『君に伝えたかったんだ。』

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.9参加中

第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版

いつも本当に、ありがとうございます!

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