青い鳥

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幸せを呼ぶ青い鳥は、自分の中にいると知っている。それでも、自分は青い鳥を探しに出かけなければならない。
あの地平線の向こう側に、もっと青い鳥がいるのではないか。白い雲の向こう側に、さらに幸せにしてくれる鳥がいるのではないか。
そのような物語は空想だと知っていても、ぼくは家を出ていくしかない。
存在しない鳥を探し続け、腐りきった世の中を放浪し、いつしか蔑みと糞と泥にまみれ、何事もなさないままにヨボヨボな老人となり、死ぬ直前に「人生は無意味だった」とたったひとでつぶやく。
だれに看取られることもなく死に、名もなき人として、共同墓地に投げ込まれる。
それでいいのだ。
最悪な後悔だらけの人生を歩んでこそ、自分の中に住む青い鳥が愛おしく見えるのだから。
ファンタジー
公開:22/05/30 15:33

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