やぽー!

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幼い娘が喋りだした。その言葉は「やぽー」だった。やっほーって言おうとしたのかな。それがおかしくて私は笑っていた。私が笑い転げるその様子を見て娘も笑っていた。幸せな日々が続いていたが、父の病死をきっかけに不幸が次から次へと降り注いだ。母の若年性認知症の発覚、夫の自殺。夫の抱えていた借金は膨れ上がり、返済に追われる為に私も働きに出るようになった。仕事と母の介護に追われる毎日。私の体は悲鳴をあげ、疲れ果てていた。娘もまだ小さいし、子育てをしながら暮らしていかなければならない。その絶望的な気持ちにどうしようもなく、私はついに涙を流した。娘の前では泣かないようにしようと決めていたのに、自然と涙が止まらなかった。

「やぽー!」
娘は泣いた私を見て、笑顔の言葉であるやぽーと発した。でも私は笑えなかった。

「やぽー!」
「やぽー!」
分かった。笑う。笑うから。今日も魔法の言葉やぽーを聞きながら生きる。
公開:22/05/30 10:02

富本アキユ( 日本 )

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Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

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・魔法のiらんど大賞2021小説大賞。大人恋愛部門「彼女の作り方」が予選通過

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