羽と翅Ⅷ

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「ここを離れるなんて。風向きの真理を変える?それがもし父王さまにばれたら。私……」
カルロは自分の上空を旋回する仲間たちを見上げて言いました。彼らは首長の休息の合図を今かと待っている様子です。
「安心しろ。俺の家族は誰も、お前が視えていない。俺が黙っていれば済むことだ。自由には責任が、つきものさ。決めるのは、お前次第」
燕は、艶やかな紺碧の片翼を一度、廓大させると背中に乗れと言わんばかりに、風の精霊の前に差し出して言いました。
コリーナは彼に触れ、その羽根に頬を埋めました。ほのかな潮の香が彼女を包みます。渡り鳥は、幾つもの海洋を渡ったことでしょう。
「私、海を知りたいの。でも、それ以上に仲間に会いたいわ」
「商談成立だ。初心者は重力に気をつけろ。追い風はお前が起こすんだろ、乗れ」
 そうして、彼女を乗せると燕は主翼を羽ばたかせ、澄んだ大空へと、瞬く間に上昇してゆくのです。
*****了
ファンタジー
公開:22/06/01 10:05
風の精霊 コリーナ 燕の首長 カルロ

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