羽と翅Ⅶ

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「卵の中の記憶?私達は"コクーンさま"から生まれてきたから、つまり繭玉の中のようかしら」
「お前、繭玉から生まれてきたのか?気持ち悪いな。なあ、海が見てみたくなっただろ。お前が遊びに来れば真砂の精霊に水沫の精霊、兄弟たちも、さぞ喜ぶだろうに」これを聞いて彼女の玉蟲色の翅が意気消沈し、しおれてしまいました。「この翅ではウミまでは到底飛べない。父王さまから、精霊たるもの各々の領域を離れるなとの定め事もあるし」「哀れな、コリーナよ。そんな約束、誰得なんだ。俺と商談しよう。俺は合図一つで、家族たちを今日一日、ここで休息させることが出来る。見るは聞くに及ばず。その間、お前を乗せて河口まで単独フライトしてやってもいいぜ。その代り俺たち一族が山岳を旅立つ時は、その力で追い風を吹かせジェット気流に乗せてくれよ。例年ここは、山おろしが逆風になって、渡り鳥には難儀な空なんだ。頼むさ」
ファンタジー
公開:22/06/01 10:00
風の精霊 コリーナ 燕の首長 カルロ

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