羽と翅Ⅵ

0
1

「違う。私は妖精じゃない、精霊! 私も、私が視える存在に初めて出会った」
「妖精か精霊か違いは知らないが。俺に視られる様じゃ、半精霊だな。俺は魅せられたか」
 燕が、ため息をついて応じます。

***

 燕の説明では彼はカルロという名で種族の首長であるそうでした。

鳥たちは春に産卵期を終えたのち、まだ飛ぶことに未熟な雛鳥と共に、大海原を越えて夏の棲家へと帰らなければならないのです。彼が先頭を飛翔し、一族がそれに付随する長い長い旅の途中でした。

「ウミ?聞いたことはあるけど」
「ひょっとして、海を知らないのか?精霊のその背中の翅は飾りかい?教えてやるよ」

 ――さざ波は高原の木々の騒めきにも似ていて、でも違うんだ。自分たちがまだ卵の殻の中に居た頃の、鼓動が寄せて返すようにもっと甘美な。
ファンタジー
公開:22/06/01 09:55
風の精霊 コリーナ 燕の首長 カルロ トラック 異世界転生

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容