Vol.1【鏡の中のワコ】エピソード6
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僕の母親は刑事だった。
「絶対に犯人を捕まえるから元気出して」と毎日啜り泣きをしていた僕を何度も励ましてくれた。そしてお気に入りのオーバーオールが少しでもほつれてしまった時も嫌な顔一つせずに裁縫道具で直してくれた。
僕はそんな母親が容姿も含めて誰よりも格好良かったし、太陽のような存在だった。しかし、母親はその事件の捜査を真剣に進めている内に、顔が少しずつ窶(やつ)れていくのが僕と当時6歳の弟にはよく分かった。母親には病弱という唯一と言ってもいいほどの欠点があったのである。だから僕が小さい時も一緒に追いかけっ子をすることができなかった。それほどの病弱さで、おそらく何日も寝ずに無理をしながらワコが殺された事件の捜査を続けていたのだろう。やがて彼女は体だけではなく、心も壊れていき、一ヶ月後に自らの手に手錠をかけて首を吊った。
「絶対に犯人を捕まえるから元気出して」と毎日啜り泣きをしていた僕を何度も励ましてくれた。そしてお気に入りのオーバーオールが少しでもほつれてしまった時も嫌な顔一つせずに裁縫道具で直してくれた。
僕はそんな母親が容姿も含めて誰よりも格好良かったし、太陽のような存在だった。しかし、母親はその事件の捜査を真剣に進めている内に、顔が少しずつ窶(やつ)れていくのが僕と当時6歳の弟にはよく分かった。母親には病弱という唯一と言ってもいいほどの欠点があったのである。だから僕が小さい時も一緒に追いかけっ子をすることができなかった。それほどの病弱さで、おそらく何日も寝ずに無理をしながらワコが殺された事件の捜査を続けていたのだろう。やがて彼女は体だけではなく、心も壊れていき、一ヶ月後に自らの手に手錠をかけて首を吊った。
公開:20/06/01 20:00
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