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実家の押入れを片づけていると奥から僕の組立キットの箱が出てきた。勿論こうして僕はいるから中身は空っぽで組立図だけが残っていた。パラパラとめくると小さな回路が滑り落ちた。組立図の間に挟まっていたらしい。予備の回路だろうか。でもこれ一つというのもおかしい……。
僕に欠けたところがある理由が分かった気がした。回路をポケットにしまい家を出た。
きっとこれで僕は、完璧とはいえないまでも正常と呼んでもらえるくらいにはなれるだろう。
アパートに戻る橋の途中で振り返ると空が見事に焼けて、つい見惚れてしまう。結局、日が沈むまで立ち尽くしていて小さな橋の上で通行の邪魔をしていたのではないかと後になって気づき反省する。ごめんなさい。
すっかり日が暮れて覗き込んだ川の流れは暗くて見えない。ポケットから僕の欠片を取り出す。大きく振りかぶって回路を川に放り投げた。誰も見ていないのにお調子者を気取って僕は橋を渡る。
その他
公開:22/05/28 22:23

界岸線のひつじ(たそがれる猫の城)

猫だったりひつじだったり。
猫の踵<猫の森を<たそがれる猫の城<nemoノコヲリ<界岸線のひつじ

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