道極水

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「そう引きずるな」
「元は僕の思い込みが原因で…」依然肩を落とす。
仕事でヘマした後輩を半ば強引に連れてきた。
「1杯奢ってやっから、マスターメニュー頂戴。俺はいつものね」
後輩はメニュー表を受け取ると首を傾げた。
「…この『道極水』って何なんですか」
マスターはグラスを磨く手を止め
「柔道など道の付くモノ。武道文化限らず思い浮かびますか」
「書道とか…」マスターは頷く。
「柔道、茶道、華道これら道のつくモノに共通するのは極める事で高みを目指す事です」
「…一体何の話を」「道極水とは」
「すなわち水の道を極めし水なんです。長年追い求めやっと巡り合う事ができました」
「一杯…8千円も!」「道を極めし究極の水です」
後輩は熟考し「先輩。僕自分で払うんでコレ…」
「馬鹿野郎!そういう所だ!」先輩は頭をこついた。
「これマスターの悪戯だよ。スマイル0円の逆だ」
「じゃあコレって」

「水道水です」
その他
公開:22/05/23 23:08
更新:22/05/23 23:10

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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