愛情レンタル

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まあ凄いわね!
ほら、沢山食べなさい
とても優しい子
天才だ!
何が欲しいの?何でも買ってあげちゃう
うちの子、凄い!

惜しみなく与えられる愛情。
それは当たり前のもので、これからも当然のように与えられるものだと、信じて疑わなかった。

僕が大学を卒業し、社会人になって、久しぶりに実家に帰った日。

「ただいま、母さん、父さん」

おかえり
よく帰ってきた
ゆっくりしなさいね

予想していた言葉は、何一つ帰ってこなかった。不思議に思って、リビングへ行くと、両親は酒を飲みながら、テレビを観ていて。
「母さん?父さん?」
「…あぁ?帰ってきたんだ」
何処と無く虚ろな目で、こっちを見たと思ったら、母は1枚の紙切れを僕に手渡してきた。
「沢山愛情注いでやったんだから、ちゃんと返せよ」
そう言って、また視線をテレビに戻した。
僕は、『愛情借用書』と書かれた髪を握り締め、呆然とその光景を眺めていた。
その他
公開:22/05/25 09:25

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