美術公募団体展

公募団体の展覧会を観に行った。美術館の広い壁面に大きな絵が何点も掛かっている。キャンバスから油絵具の匂いがしてきそうだ。
ぱりっとしたスーツ姿の老紳士がやってきた。団体のボスらしい。四、五人がぞろぞろとついてくる。団体の幹部だろう。老紳士は作品を順に観て歩く。絵にぶつぶつと言いながら歩く。聞くともなしに聞いていると、
「つまらん」
「退屈だ」
「未熟者」
「感動する絵がひとつもない」
と不満そうな表情でつぶやいている。
後ろの人たちは、
「おっしゃる通り」
「ごもっとも」
「まさしく」
「勉強いたします」
と、かしこまって後をついてゆく。
一つの作品の前で老紳士は足を止めた。タイトル「螺旋階段」。螺旋階段だけを描いた作品である。老紳士は画面に食い入るように観る。そして首をひねる。それから螺旋階段のようにくるくると首をねじった。幹部たちも同じように首をくるくるとねじった。