友よ、梅雨の季節だ

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戦国時代、とある武士がいた。

「殿に仕えていることが我が誇りじゃ。この命、殿の為に」
「お前は固いな。自分の為に自分の命を大切にしろよ」

志の高い私に友である貞松貞彦は言った。命を大切にしろと。殿に仕える事なんて二の次だと。命あっての事だろうと。だが私は武士だ。殿の為に働く事こそ全てだ。
「なあ。俺はな、梅雨の時期が好きなんだ」
「梅雨が好きだと?あのジメジメした時期がか?」
「ああ。そんな時期に攻めてくるところなんてないからな。心穏やかに過ごせる」
「お主らしいな」
そして私達は、まもなく戦に駆り出された。敵の兵力は圧倒的で、もはや勝つ見込みはなかった。
「行け!!ここは俺に任せろ!!」
「貞彦!!お主を置いてなど行けない」
「お前は殿を守る役目があるだろう」
「お主もだ!!」
「俺は殿よりも友を守る」
あれから十年が経った。私は今も生きている。
なあ友よ、そろそろ梅雨の時期だ。
公開:22/05/18 10:20
更新:22/05/18 12:15

富本アキユ( 日本 )

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