バラと万年筆

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「お客さん、お釣りは1500円です」
「すまないが、百円をばらで貰えるかな」
「何色の薔薇が宜しいですか?」

小説家「ああ、私にはこれ以上、どうしても書けない」
編集者「またですか。安心して下さい。締め切りまで時間はたっぷりあります。原稿用紙、万年筆、インクの予備も完璧です。冷蔵庫には栄養ドリンクも」
小説家「ああ、薔薇の字がゲシュタルト崩壊して見える。今の私には電話くらいしか掛けるものがない」
編集者「もう仕方ないですね。いつもの様に私が小説を全部書きますから万年筆のインクを倉庫から持って来て下さい」

一時間後
小説家「君、まだ書けないの。早くしてくれたまえ。私をどれだけ待たせるんだ」
編集者「待っているあなたも辛いでしょうけど、待たせている私も辛いんですよ」
小説家「それでもプロかね」
編集者「プロはあなたでしょ」
小説家「違うな。私はプロではない。万年筆が私に書かせているのだ」
公開:22/05/18 05:23

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