バラと万年筆

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ある街に仲の良い夫婦が暮らしておりました。
仕事の方はお互い上手く行っていませんでしたが不満も言わず、二人とも幸せでした。

そんなある日、妻はいつもの様に仕事へ出かけました。
「薔薇はいりませんか。誰か薔薇を買って下さい」
その日はクリスマスイブでした。
けれども全く薔薇は売れませんでした。
それに加え、吹雪で体がだんだん冷えていきます。
「ああ、この薔薇が炎だったら暖かいのに」
言っては見た物の現状は何ひとつ変わりません。
ふと、向かいを見ると自分と同じように万年筆を売っている少女を見かけました。
「万年筆はいりませんか。これを使えばあなたの人生が薔薇色になりますよ」
それを聞いた妻は無性にその万年筆が欲しくなりました。旦那が喜ぶと思ったからです。

翌日、万年筆売りの少女は消息不明になりました。
ただ、少女のいた場所から山の方へ向かって白い雪の上に赤い何かの跡が続いていたそうです。
公開:22/05/18 04:24
更新:22/05/18 04:45

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