高校生カップルと悪ガキ

昇降口に立ち、空を見上げる。雨は止みそうにない。
傘は持ってきた。だけど、傘立てに置いていたそれは誰かに盗まれていた。
溜息を吐く。濡れて帰るしかないのかなぁ…
「傘、忘れてきたの？」
彼が声をかけてきた。あれ？今日も部活じゃなかったっけ？
「今日は中止だって。監督の息子さんが熱出したらしくてね」
彼は傘を差し出してきた。
「家まで送っていくよ」
やった！まさに怪我の功名だ。

彼と肩を寄せ合い、歩いていると小さな男の子が走ってきた。
「兄ちゃん、傘に入れてよ」
彼の知り合いか？彼は苦笑いを浮かべると「この子の家、すぐ近くだから寄らせて」と言ってきた。
男の子を家へと送る。そのタイミングで雨が止んだ。
「あの子が監督の息子さ」
彼が教えてくれた。元気そうなあの姿からするとずる休みだな…
「あとこれ、あの子が君にって」
彼が私に手渡したもの。それは私の盗まれた傘だった。
気の利く悪ガキだな。