気球の上で、チカイマス

この期に及んで、新郎は迷っていた。こんな開放的な結婚式を開いたものの、自分は目の前の女性をずっと愛していけるのかと。
「シンロウ、アナタハ、シンプヲ、イッショウアイシツヅケルコトヲ、チカイマスカ」
気球に乗っての結婚式。上空1kmで神父に問われる新郎を新婦は睨む。

この結婚式のすぐ側で離婚式が行われていた。
「アナタハ、コンゴ、ツマニ、チカヅカナイコトヲ、チカイマスカ」
「はい、誓います」
「ソレデハ、ツマ、チカイノツキオトシヲ」
男は女に突き落とされた。気球離婚式では定番の「誓いの突き落とし」だ。それを見た新郎の背中はゾクゾクッとなった。
誓えば最後。離婚はできない。かと言ってここで「やっぱ誓いません」なんて言おうものなら即突き落とされるかもしれない。どうする。どうする。ええい。一度は好きになった女だ。とことん愛してやるぜ。
「誓いまぁぁああぁぁす！」
新郎の声は裏返っていた。