スイッチカレンダー

いつも見ているカレンダーだったはずだ。昨日の夜までは。
朝見ると、今日の日付の数字だけが、子どもが、押して遊ぶおもちゃのスイッチみたいに浮き出ていた。
無性に触りたくなり、触ってみると、押すことが出来た。指先にツルツルした紙の感触。カチッと小さな音が鳴り、映像が頭の中に流れ込んできた。
テスト用紙、数学の問題文、シャーペンで書かれていく答え。
映像がプツンと切れ、目の前には、カレンダーを指差す指が見えた。
その日、数学の抜き打ちテストが行われた。問題も全て同じ。平均点しか取れないテストが、満点だった。
押すと未来が見える？
半信半疑だったが、それから、数字が浮き出て来た日は、映像と同じことが起きた。失敗は、映像のお陰で上手く避けることが出来た。

今日も、数字が浮き出ている。ワクワクしながら押すと、カチッと音がした。
薄暗い部屋に立っていた。足元には、苦しんでいる人達。赤い色が見えた。