羽と翅Ⅳ

0
1

 或る日、コリーナはいつものように、無花果の木の背によじ登り、果実を齧るのに飽きると、お決まりに自分の背に備わる翅を撫でながら、青い空を眺めていました。雪渓の峰々の稜線を流れる雲は、碧天でゆるやかに姿を変えていき、次いで、Ⅴ字に連なる燕(つばめ)の群れが空を泳いでいきます。思わず彼女は一糸乱れぬ隊列のその飛行隊に悪ふざけを仕掛けようと考えました。そして、自分の後ろを振り返ると、その前翅に霊力を集中させ、さわさわと軽く震わせました。絹のワンピースから透過する彼女の翅脈はエメラルド色に輝いていて、脈相の一部は金糸の模様で彩られ、左右の翅が震える毎に、鱗粉を舞上げ奇跡の力を放つのです。渡り鳥の一群は、彼女の出来心で巻起こされた逆風のせいで、突風の赴くまま散り散りに吹き飛ばされてしまいました。その様子のおかしさに耐えられず、笑っているところへ、天空から一羽の燕が彼女を目掛けて急降下。
ファンタジー
公開:22/05/20 10:55
更新:22/05/19 19:15
風の精霊 コリーナ 無花果の樹の上に

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容