贅沢すぎた日々

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初鰹の季節か……

西日差す恋人の部屋で寛いでいた。珍しく花が飾られている。
「何で部屋の隅っこに置いているの」
「だって陽があたると萎れちゃって可哀想でしょ」
「陽を浴びて沢山観て貰うことこそ花冥利だと思うけどな」

夕飯支度の手伝いで、恋人は階下へ行ってしまった。一人残され、陽だまりとなったテーブルの上に花を置く。白いトルコキキョウ。しっとりと重なり合う白亜の花びらが仄かに夕日色に染まっている。こっちのほうが断然良い。 

時折階下から湧き起こる笑い声をよそに、遥か異国の地に思いを馳せる。赤く灼けた荒野で、ひっそりと咲く白い花。黄昏の中そよ風に揺らめく。何だか妙に懐かしい。
「ご飯できるよ」「早くおいで」「こっちで一緒に飲もうや」「今夜は初鰹よ」…… 

折角のひとときが掻き消された気がして、不貞腐れ気味になってしまった遠い初夏の夕暮れどき。 
あの家の人たちは今どうしているのだろう。
青春
公開:22/05/15 12:27

痩せがえる

遅筆のため、週に一作できればと思っています。どうか、よろしくお願います。

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