無口なラジオ

「35歳を過ぎると、ザザーーー…ですよね」「昔は、ザザーーーザザーーーザザーーー…」「いかにも昭和ですね。ザザーーーザザーーー…」「いまはザザーーーザザーーー…、すぐ炎上とか」「さて、次の曲はザザーーーザザーーーのザザーーーです」「♪〜」

「7時のニュースをお伝えします。総理大臣が、記者会見で辞任を表明しました。先日のザザーーーザザーーー…という発言に、与野党から批判の声があがり、ザザーーーザザーーー…と、みられています。次のニュースです。ザザーーーザザーーー…ザザーーーザザーーーザザーーー…」

最近、ラジオで人の声をとんと聞かなくなった。AIが「不適切」と判断した言葉は、すぐさま、砂嵐のような、波のような、ザザーーーという音に打ち消されるからだ。もとは、政治家や芸能人のための失言防止学習システムとして開発されたらしいが。ラジオばかりが、どんどん無口になっている。