僕のペットをよろしく

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バイト先のペットホテルにシャーレを手にした男が入ってきた。
「僕のマリーちゃん預かってもらえませんか」
蓋を取ったが中には何もいない。訝しむ俺に男は顕微鏡を差し出す。
ミジンコが元気よく泳ぎまわっていた。
残念ながらうちは犬専用だ。俺は断ろうとしたが、どういうわけか店長が引き受けてしまった。

店長はハナからミジンコの世話などする気はなかった。どうせ見分けはつかないんだから引渡し日になったら近所の溝から採ってくればいいと言う。
「宿泊代、儲けたね」
店長のにやけ顔に俺は背筋が寒くなった。

引渡しの日、シャーレを受け取るなり男は金切り声をあげた。
「マリーちゃんはこんなに臭くない!」
ミジンコは餌によって臭いが変わる。マリーちゃんに与えていたのは臭いを抑えるホウレンソウパウダーだったのだ。
店長は男に宿泊費を返却、逆に慰謝料を支払った。この一件がもとで悪評が広まり、ホテルは潰れてしまった。
その他
公開:22/01/09 22:56
更新:22/01/10 00:41
ペットホテル ミジンコ=1泊1000円

エス氏( 青森 )

落語とか漫才とかが好きなので、クスッと笑えてオチが綺麗なものを書こうと頑張っています。
よろしくお願いします。

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