獅子は目覚める

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獅子は檻の中にひたすら周りの人間に求められるように振舞い飼われていた。

———息苦しい。

ただ与えられた場所で鑑賞用として生きるのは。
気まぐれに吠えてみると周りの人間は何事かと思い、宥めてくる。

湧き出る狩りの感覚が何度も胸の内から蘇ってくる。
獅子はいつもは気にしていなかった檻の出口や人を注意よく観察してみた。

何ということだ。

人によっては杜撰(ずさん)な作業で、少しの間なら大丈夫だろうと檻に鍵を閉めずにその場を離れている人間がいるではないか。
普段大人しくしていたから、油断していたのだろう。
何もかも諦めていた頃には気づかなったチャンスに獅子の胸の内は高鳴っていた。

今までの日々は無駄ではなかった。

さあ、行こう。自分らしく生きられる場所へ———
その他
公開:22/01/10 16:12

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