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僕は産まれながらの特異体質で、心に何か異変が起こると、その都度音が鳴るという能力があった。
ドキドキ、ドキドキ▪▪▪。
普通の人なら心臓から音は鳴らない。でも僕の胸の中から、今こうやってはっきりとドキドキという音が聞こえていた。
この体質はとても不便だ。だって相手に僕の今の心理状態が筒抜けということになる。なので普通の人より多少オーバーに振る舞って、心の異変を悟られないようにしなくてはなはない。
「ごめんなさい。他に好きな人がいるの」
彼女にその言葉を告げられた瞬間、心の音はドキドキからドン!という音に変わった。ドン!は一度だけで、後は静かになった。
「分かったよ」
僕は努めて平静を装ったが、彼女にはドン!の音が確実に聞こえただろう。
「またチャンスがあるかもね」
僕はドン!を忘れてもらう為に強がった。
「ごめん私の好きな人はあなたの親友なんだ」
ポキッ▪▪▪。僕の中から乾いた音が鳴った。
その他
公開:22/01/10 14:50

セイロンティー( 鹿児島 )

初めまして。昔から小説を書くのが好きでした。ショートショートの魅力に取り憑かれ、日々ネタ探しに奔走する毎日です。
小説のコンセプトは【ドアノブの静電気くらいの刺激を貴方に】です。
皆様、どうぞ宜しくお願い致します。

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