不急車

「何だアレ…救急車？」
夜道を友人と歩いていると青紫色のランプ、サイレン音の無い救急車の様な車が横切った。
「あれは不急車だよ」消防士の友人は見慣れた様子で言った。
「不急？何それ」
「実は緊急通報の２割は不搬送なんだ。中にはゴキブリが出た、とか酔ったから家まで送れなんてのもある」
「知ってる！不謹慎だと確かに驚いたよ」
「基本どんな通報でも直行しなければならない。でも明らかに不謹慎と判断されれば不急車の出番さ」
「で、不急車って何？」
「そのまま。一般車は道を開ける義務はない」確かに遠くで信号待ちしている。
「でもわざわざ車を向かわせるって事は何処かへ搬送するんだよね。一体何処へ…」
「知りたきゃ君も通報してみればいいさ」
「ハハ…気になるけどやめとくよ」
「ちなみに、不急車の事を俺らの間では通称『ＯＱ』って呼んでるぜ」

「ＯＱ…お灸だったりして」
友人はニヤリと不敵な笑みを漏らした。