マスク売りの少女

「おじさん、マスク買って」
寒空の下、忙しそうに歩く人達に少女は声を掛ける。
「おや、絵が描いてあるんだね、可愛いい、君が描いたのかい？」　
マスクの包装には、拙く可愛らしく、花や動物などが描かれていた。
「はい、あの、一つ５０円ですけど」
「そうかい、ほら１００円だ、お釣りは要らないよ」
「ありがとうございます」
「お嬢ちゃん、こんな寒い所で、自分が風邪引いちゃうよ」
お巡りさんが声をかけた。
「大丈夫です、皆が変な風邪にならないように、願いを込めたマスクなんです」
そう言って少女はマスクを差し出した。
「可愛いい絵だね、君の優しい気持ちが込められているようだ」　お巡りさんはお金を払おうとした。
「お巡りさんは、特別にサービスします。　お仕事、がんばってください」
お空に行ってしまったお祖父ちゃんを見上げ、少女は今日も、祈りの絵を描いたマスクを配っていた。