2
4

服飾デザイナーの私には才能がない…
故に同僚達からは見下され、出来たばかりのデザイン案を踏みつけられる…悔しくて涙が出る。
私はトイレで一人泣いた。一頻り泣き、戻ってくると上司は私を見て溜息を吐いた。
「泣くのはいいけどメイクはちゃんと直してきなさい」
上司は化粧品を取り出して私のメイクを直してくれる。目の下に塗られた白いファンデーションが冷たい。腫れた目の熱が徐々に引いていく。
鏡を見て驚いた。雪原のように白く美しい肌が映し出されていた。
「それ、雪化粧っていう私のとっておきよ。もう少ししたら頭も冷えてくるだろうから、また新しいデザインを持って来なさい」
上司の言葉通り、時間が経つと頭が冷えてくる。
それどころか同僚達に叩かれ踏まれた事で顔もデザイン案も厚くなってきた。嫌味が踏み固められた雪の上を滑るかのように私の頭を素通りしていく。
そうして雪化粧が取れる頃、私の才能がついに芽吹いた。
公開:22/01/08 20:48

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容