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ある田舎では、正月が過ぎると、カチカチに硬くなった鏡餅の殻が割れ、中から「もち鳥」が生まれてくる。
もち鳥は、真っ白な丸餅のような形をした柔らかい小鳥だ。見た目は白文鳥の雛のように愛嬌があり、ヒョコヒョコと歩く。
鳥もちのように体中がベタベタしていて粘着性があり、つき立ての餅のように自由自在に伸び縮みする。
もち鳥が飛び立つと、羽根の代わりに小さな羽二重餅が上空から降ってくる。
それを拾い『鳥の小餅』と称して茶屋などが売り出し、地元の名物となっている。その餅を食べると、もち肌になれるので女性に大人気だ。
この田舎では餅酉神社があり、鳥居や灯籠、社殿の屋根にもち鳥の装飾が輝く。そして、もち鳥に感謝して鳥の小餅が奉納される。
立つ鳥跡を濁さずというとおり、飛び立ったもち鳥は、いったん田舎から姿を消すが、その年の冬には牡丹餅となって降ってくる。その餅で正月用の鏡餅を作るのがこの田舎の風習だ。
その他
公開:22/01/08 07:12
田舎 正月 鏡餅 丸餅 小鳥 白文鳥 羽根 羽二重餅 立つ鳥跡を濁さず

山田衆三(SHUZO)( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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