蔵書1冊の図書館

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公園のすみっこで、小汚いおっさんが図書館をやっていた。どこで拾ってきたのか教室で使うような机に本が1冊、ポンと置いてある。その正面に「図書館」と書かれたA4のコピー用紙が貼られているのだった。
「1泊30円ね」
図書館なのに金取るのかよと文句を言いながら、俺は2泊分の料金を払った。利用登録も貸出記録もなし。そりゃまあ、誰に貸したか忘れることなんてないのだろうが。

しばらく忙しい日々が続き、俺はすっかり本のことを忘れていたが、1ヶ月ほど経ったころ不意に存在を思い出した。今さら返すのめんどくせえ、個人情報渡してないから借りパクしても問題ねぇよな…と画策したところで、背表紙が目に入る。
『罪と罰』
なんとなく本を開いてみた。

翌日、俺は図書館へ本を返しに行った。おっさんが電卓を叩いて見せてきた。延滞料金、1泊1000円×30日分。
「へへ、お前みたいなやつがいるから図書館はやめらんないよ」
その他
公開:22/01/07 23:00
更新:22/01/07 23:40
あおもり冬の読書週間 読書は心をあたためる

エス氏( 青森 )

落語とか漫才とかが好きなので、クスッと笑えてオチが綺麗なものを書こうと頑張っています。
よろしくお願いします。

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