真っ白な切手

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「先輩、郵便番号未記入のハガキの中にこんなのがあったんですけど」

住所も未記入で、模様や金額の書いてない真っ白な切手が貼ってあった。

「あー、これな。あの世への手紙だ」
「え、あの世?それってどうするんですか」
「あそこに七色の集配箱があるだろ、あそこに入れておけ」

言われたとおりに部屋の隅にある七色の箱にハガキを入れる。中には同じように真っ白な切手を貼った手紙が何通か入っていた。

「これ、どうするんですか?」
「どうもしないよ。いつの間にか空になってるんだ。誰か配ってるんだろう」
「え、だって宛先書いてないですよ」
「そんなの必要ないんだろ」

その晩、雨が降った。一晩中降り続いた雨は朝の通勤時間帯にやっと止み、朝日の中、虹が輝いた。

「あっ、先輩。あの箱の中が空っぽです」
「やっぱりそうか。虹が出ると空になるんだよな」

虹を渡って配達に行くのか。ちょっとやってみたいな。
その他
公開:22/01/04 14:56

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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