公園の富士山

新しい公園ができた。
植木や草花で囲まれており、ドーナツ型のベンチや屋根のあるスペースなど、市民が憩えるような空間になっている。
中央には山がある。山といってもヨチヨチ歩きの子が上り下りできる程度の高さだ。

陽子は、開園した日から毎日、歩き始めた葵を連れて通っている。葵は楽しそうに山を上り下りしている。たまに下りるときに転んで泣くこともあるが、それでもチャレンジを欠かさない。あっという間に山を制覇した。

「この山、葵の成長に合わせて高くなったらいいのに」陽子がつぶやくと、山が揺れた。その日から山は毎日1cm高くなっていった。

少しずつ高くなる山を葵は毎日上った。段々傾斜がきつくなるが毎日わずかな違いなので難なくクリアしていった。そして気が付くと山は富士山と同じ高さになっていた。

11歳になった葵は、毎日小学校からの帰りに公園に寄り、富士山を上り下りしてから家に帰っている。