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 立ち並ぶ立派な木々や点在する大岩の表面を埋め尽くす様に苔が生えている。
 地面も同樣に苔むしており、歩けば靴の形に愛らしく沈み込み、少しの水を吐き出す。
 生まれ変わったように白い太陽光が帯状に差し込んでいる。
 森や山の在るべき姿だと勝手に思う。茶色を求めるなら砂に頼るべきだ。
 近くに見える泉は透明で底の方までよく見える。魚は泳いでいない。清らかな水には自我が芽生えるのだろう。
 水際に寝そべって、水面を指でつついた。とても冷たくて、よく指に染み込んだ。
 こうであれば最高なんだ。
 徐に両手でお水を掬う。手と手の隙間から零れ落ちた雫が衣服を濡らした。
 全てを失わぬうちに、いずれ私にも苔が生え、蔦が絡むことを願って、一息に飲み干した。
その他
公開:22/01/05 22:17

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