空が飛びたいのなら

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 背骨が浮き上がっている辺りから食虫植物のお口の様にがぱぁと開かれると、折り畳まれていた黒い翼をゆっくりと広げながら伝統的な死神が姿を現す。
 〝ばろろぉ‥‥‥ばろろぉ〟案外軽い音を立てて、翼に隠れた筋肉が活動を始める。
 死神は人間の背骨を掴んで、空へと連れていく。角張った骨と骨が擦れることは、互いに痛みを伴うらしい。
 人間はこうして空を飛ぶことができる。
 死神は人間を飛ばしてくれる。
 死神は絶対に人間を離すことがない。実はとても義理堅い存在であるらしい。
 手に持った大きな鎌の扱いを誤って、引っ掻いたり突き刺したりしてしまうこともあるけれど、然程気にならないようだ。
 少しくらい血を流している方が楽に居られるそうだ。
その他
公開:22/01/04 21:24

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