雲の上の鍵工房

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冬の女神は暑いのが苦手だ。自分の出番が来るとさっさと太陽を倉庫に入れてしまう。私の仕事は倉庫を開ける鍵を作ることだ。
なんとしても冬を長引かせたい女神は、鍵穴の形を毎年変えてくる。複雑な年もあれば拍子抜けするほど単純な年もある。ただ一つ分かっているのは、六角形ということ。女神の持っている機械がこの形しか作れないからだ。
鍵穴に合致するまでひたすら作り続け、おそらく一冬に数千兆個以上は作っていると思う。
製造工程は塵や粘土の粒に小さな氷をつけてゆくだけの単純作業だが、これを氷点下の部屋でしなければならない。とにかく寒さが辛い。
一つ出来上がるたびに鍵開け係に渡す。試している間は休憩時間だが、合わなければまた作業開始だ。
見事合致して倉庫から太陽が取り出せれば、その年の私の仕事はうち止めである。

ところで、合わなかった鍵は一定量が貯まると地上に捨てられる。これを地上では雪と呼んでいるそうだ。
ファンタジー
公開:22/01/02 20:00
更新:22/01/02 23:51

エス氏( 青森 )

落語とか漫才とかが好きなので、クスッと笑えてオチが綺麗なものを書こうと頑張っています。
よろしくお願いします。

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