気持ち洗濯機

「はあっ」とため息をついて、脱いだ服を洗濯機に放り込んだ。
この洗濯機、ストレスを洗い落としてくれる優れもの。
ドラム式の内部で七色の光のシャワーを浴び、服達はくるくるとゆっくり回り始める。
見ているとだんだんと気持ちも安らいでくる。　染み付いたストレスが落ちて、お清めの濯ぎと香木の風で乾燥が進む頃には、会社であった嫌なことはどうでもよくなっていた。　
祝詞が終わり、終了のおりんがチーンと鳴った。　洗濯機から取り出した仄かに香る服達を着ると、私はスッキリとした気分で夕食の準備に取り掛かった。

ドタバタとお祖父ちゃんがやって来た。　
「あら、洗濯ですか、珍しい、何かあったんですか？」
「はあっ、最近物忘れが酷くて、イライラするんじゃ」
お祖父ちゃん、くるくると光ながら回る服を見つめながらぼーっとしてる。　やがて、穏やかな笑顔で部屋に戻っていった。
忘れられた服がチーンと鳴いていた。