恋する案山子

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自由に動けることができれば、どれ程幸せなことだろう。
そうすれば君に触れる事ができるのに……。
僕の思いを伝える事ができるのに……。

僕は案山子だ。畑を鳥から守っている。そんな案山子の僕は、イケない恋をしてしまった。人妻を好きになってしまったのだ。その人は、僕が守っている畑の持ち主の嫁として嫁いできた人だ。彼女は、僕を見て「とても可愛い案山子だこと」と言ってくれた。

そして雨の日も雪の日も僕の所にやってきては、話しかけてくれた。

「今日は寒いね。寒い中、畑を守ってくれてありがとうね」
「今日は凄い雪だね。雪だらけじゃない。私が取ってあげるね」

案山子である僕に親切にしてくれる彼女に、僕はいつの間にかいけない恋心を抱いてしまった。そして畑の持ち主は亡くなり、彼女は未亡人となった。

「寂しいね。これからは一人で畑を守っていかないとね。いや、お前がいるね」

嗚呼、僕は彼女と話したい。
公開:22/01/01 12:17

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

https://youtu.be/frouU2nCPYI

・魔法のiらんど大賞2021小説大賞。大人恋愛部門「彼女の作り方」が予選通過

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ブラウン・シュガー
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