時は金なり法

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時を無駄に浪費する国民が増えてきた。
そこで時の政府は、貴重な時を金に換算できるように法律を定めた。通称「時は金なり法」だ。
時の金融庁の指導のもと金融機関は時を取り扱うようになり、時をドルやユーロ、円などの貨幣に交換できるようにした。
また、時の先物取引所が開設されると、時の価値がうなぎのぼりで上がっていくとともに、時を資産としてストックする国民が急増した。
そうなると、時を盗む泥棒が現れた。時の警察が取り締まりを強化したが、タンス預金ならぬタンス預時をしている家へ空き巣に入る強盗団があとを絶たなかった。
業を煮やした時の政府は、時は金なり法を改正し、時を金ではなく鐘に換算することにした。
こうして時が盗まれることはなくなった。
その代わりに、
「ゴーン、ゴーン」「ゴーン、ゴーン」「ゴーン、ゴーン」……
いたるところで厳かに時の鐘をつく音が聞こえ、国民は時の大切さを自覚するようになった。
その他
公開:22/01/01 00:00
浪費 国民 政府 換算 法律 時は金なり 金融庁 金融機関

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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