ひかえめな患者

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「あと1週間で退院できるでしょう」
K医師がベッドの上の僕に言った。
僕は半年前に体調を崩した。いくつかの病院にかかったが症状は改善せず、やっと治してくれたのがK医師だったのだ。
不思議なことに僕にはK医師の診察の記憶がない。診察室に向かうところで意識が飛び、気がつくとベッドに寝ていた。
僕は尊敬の念を込めて言う。
「K先生はまるで魔法使いですねぇ」
するとK医師は聴診器をいじりながら、実は…と話し始めた。
僕はこれまで無意識のうちに自分の病状を控えめに話していた。そのため必要な検査ができず、治療が難航していたらしい。
そこでK医師は僕に酒を勧めてみた。酔っ払って口が軽くなるだろうと思ったのだ。
これが間違いだった。
僕は相当酒癖が悪かった。看護師にセクハラ発言を連発し、診察室で暴れ、しまいにはゲロを吐き、ようやく泣きながら病気の辛さを訴えたのだという。
3日後、僕は逃げるように退院した。
その他
公開:21/12/31 19:48
医者 患者

エス氏( 青森 )

落語とか漫才とかが好きなので、クスッと笑えてオチが綺麗なものを書こうと頑張っています。
よろしくお願いします。

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