空飛ぶ押し売り

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空飛ぶ自動車が実用化され、四半世紀が過ぎた。この間、空路の自由化と大衆化が進み、今では専用の乗り物がなくても重心を支えるものがあれば、ほうきやモップにまたいで誰でも簡単に空を飛ぶことができるようになった。

もっとも長距離移動に関しては今も航空機による大規模輸送が主流だ。自分で空を飛ぶより気楽だし、何より安い。しかし、押し売りには用心したい。どういうことか説明しよう。例えばあなたがフライト中に窓際の席に腰掛けているとしよう。すると不意に窓越しに顔をのぞかせる連中がいる。彼らはよく日焼けした顔でニヤリと笑い、パンや飲み物、宝石など、あらゆる雑貨を売りつけてくる。目が合ったら要注意。遠慮なく窓をぶち割って機内に手を伸ばしてくる。機内の安全お構いなしの、まるで賊のような振る舞いから一部の集団は「暴空族」とも呼ばれ、警察が取締りを強化している。空の自由化はこうした負の一面も持ち合わせているのだ。
ファンタジー
公開:21/12/28 19:18
更新:21/12/28 19:19
ファンタジー 未来 交通

アカサカ・タカシ( Chicago )

2022年から米国シカゴ在住。

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