雪の坊

10mを超える雪の壁を割って、アスファルトの道は続いていた。　途中、大型バスだけが何度もすれ違う。
蔵王エコーライン。
視界の閉ざされた明らかに人間の入ってきていい場所ではないのに、バスの中はスキー客や温泉客で満員だ。
少し開けた山腹で鹿が数頭見れた。　説明だと日本カモシカは道路の融雪剤を舐めるため現れて、よく事故になる。　文化財保護法違反になるらしく、なかなかの厄介者だ。

夜のロープウェイ。
私はこれが見たかった。
雪原にライトアップされた樹氷群。
5mを超える「雪の坊」と言われるスノーモンスターだ。
それが松の木であると分かっていても、圧巻の光景だ。
風下の方に、何かに襲いかかるような恰好で群立している。
ライトアップされた巨人達は、今にも雄叫びを上げそうな気がした。
少し怖がる私の手を、温かい大きな手が包んだ。
ファンタジックな夜が、更にドキドキになっていく。