玉の輿日記

「○月☆日
東大卒外資系勤務の彼氏にハリウッド女優のKがアプローチしてきた。でも彼は、私のことが大切だからって断ってくれた！不安にさせてごめんってカルティエのリング買ってくれた♡大好き♡」
…以上は、私の日記から抜粋したものである。もちろん、ほとんど大噓だ。
暇つぶしのつもりでハイスペック彼氏の妄想を綴ってみたら思いの外楽しく、結果的に数年がかりの大長編となってしまったのだ。
実は、半年ほど続けたところでネタ切れが来た。嘘くさい人物造形と具体性に欠ける記述の日記が続いた。誰に見せるわけでもないのだが、その出来の悪さが許せなかった。
私はハイスペック男子の生態について徹底的に勉強した。座学でわからない部分があれば彼らの集う場所へ赴いて観察。彼らと話を合わせるため図書館に日参した。
気がつくと、実際に彼氏ができていた。
いま私の左手の薬指には、ハリー・ウィンストンの結婚指輪が光っている。