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「また人間だ」
雪女を一目見たくて、雪山を登りさまよう愚かな人間どもがまた一人出た。

私なんかに会うために、凍え死にそうになるくせに。何故、この深い雪山にやってくるのか、訳が分からない。

「バカみたい」
私なんかに会っても、私から出てくる冷気で凍りつきかねないってのにね。

「この雪山から出ていきなさい」
遭難した人間の目と私の冷たい目が会う。
わざと幽霊じみたふりをして怯えさせたり、恐い形相と怒気で追いかけて、雪山から逃げさせることをよくするのだが、今回の人間は逃げないから頭を悩ませた。

「お行きなさい」
雪を操るのが得意な私は、山の雪をありったけ集めて、雪の長い長いトンネルを作り上げて、人間に帰り道を用意した。

人間は「ありがとう。雪女様。一目会えて本当によかった。それでは優しい雪女様。」

こうして雪女の噂はまた広がり、雪女の悩みは雪山のように降り積もるのであった。
その他
公開:21/12/28 23:29

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