きこえる

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私の長い人生で一番聞いていたのは貴方の声でした。
その声は私を安心させてくれるものであり、時に不安や怒りを感じさせ、聞きたくないと思うものでもありました。
まさかそれが本当になるなんて…こんな事ならつまらないケンカなんてしなければよかった…
今日と同じ明日が続く保証なんてどこにもない。私も貴方も80歳を越え、いつお迎えが来てもおかしくないとよく口にしていました。それが本当に来るとは思っていませんでした。
いつもみたく縁側に座る貴方は眠るように息を引き取っていました。
私は今、貴方以外の声が耳を素通りします。今、私の耳に聞こえるのは心に空いた隙間風の音だけです。
貴方に会いたい…貴方の声を聞きたい…嗚咽する声すらも私の耳には聞こえません。
心にぽっかり空いた穴が寒々しい音を私に聞かせ続けます。
貴方の声はもう私の記憶の中でしか聞く事が出来ません。
貴方、答えて下さい。風の音はいつ止みますか?
公開:21/12/25 20:46

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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