12
10
「ケンちゃん、10歳の誕生日おめでとう!」
10本の蝋燭の炎が揺らぐケーキを前に、一人息子のケンジが満面の笑みを浮かべた。
「もう10歳か。早いもんだな」
夫の呟きにじんと目頭が熱くなる。
泣き続ける息子を腕に、母親失格かと涙した日々も今となっては懐かしい。
彼が生を享けて10周年。それは親となった10周年でもある。
おめでとう、ケンちゃん。
おめでとう、私たち。
今日ばかりは心ゆくまで食べて祝おう。
「ねえ、もしかしてママのお腹に僕の弟か妹がいるの?」
息子の唐突な発言に、私は思わずむせ込んだ。
「な…何を…」
「だってママのお腹、最近大きくなってきたんだもん」
ぷっと吹き出した夫を横目で睨みつける。
―愛する息子よ。
それは君を産んだあと、10年間に亘って貯め込んだ私の脂肪だ。
「いいさ、家族が健康なら。なあ?」
私は曖昧に頷くと、やけくそで残ったケーキを丸ごと口の中へ押し込んだ。
10本の蝋燭の炎が揺らぐケーキを前に、一人息子のケンジが満面の笑みを浮かべた。
「もう10歳か。早いもんだな」
夫の呟きにじんと目頭が熱くなる。
泣き続ける息子を腕に、母親失格かと涙した日々も今となっては懐かしい。
彼が生を享けて10周年。それは親となった10周年でもある。
おめでとう、ケンちゃん。
おめでとう、私たち。
今日ばかりは心ゆくまで食べて祝おう。
「ねえ、もしかしてママのお腹に僕の弟か妹がいるの?」
息子の唐突な発言に、私は思わずむせ込んだ。
「な…何を…」
「だってママのお腹、最近大きくなってきたんだもん」
ぷっと吹き出した夫を横目で睨みつける。
―愛する息子よ。
それは君を産んだあと、10年間に亘って貯め込んだ私の脂肪だ。
「いいさ、家族が健康なら。なあ?」
私は曖昧に頷くと、やけくそで残ったケーキを丸ごと口の中へ押し込んだ。
その他
公開:21/12/23 17:21
更新:21/12/23 18:05
更新:21/12/23 18:05
たらはかにゃーさん主催
十周年祭り
お題「十周年」または
「貯まる十周年」だそうです
田丸先生の作家デビュー
十周年をお祝いして
#142
2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnoteと公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません
【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・note×Panasonic「思い込みが変わったこと」コンテスト 企業賞
・SSマガジン『ベリショーズ』掲載
(Kindle無料配信中)
【近況】
第31回やまなし文学賞 佳作→ 作品集として書籍化(Amazonにて販売中)
小布施『本をつくるプロジェクト』優秀賞
【note】
https://note.com/akishiba_note
【Twitter】
https://twitter.com/CNecozo
ログインするとコメントを投稿できます