水門管理

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水門を管理する賢斗くんが失踪した。関連はわからないけれど村人の爪の伸び方が異常に早くなったらしい。季節や天候に応じた彼の水門コントロールは完璧で、村人から信頼されていた賢斗くん。
私は高校生のときに彼と交際していたことがある。交際といっても数日のことで、並んで商店街を歩いたり、水門の上で星を眺めたり、一緒にキツネを食べたりしただけの恋だった。あれから二十年が経ち、私は捕獲されて、彼の代わりに水門を管理するように頼まれた。
「身からでた錆じゃろう」
村長はそう言って鎖で水門に繋がれた私に手を合わせている。その手には血がべっとりとついていて、周辺の農家からは火の手があがり、どの家からも老女ばかりが逃げてきて、村長が振り向くと、彼女たちは動きを止めた。わずかに動いた老女の首筋を村長が仕留めるとそれはキツネで、食べながら涙する村長が私に頼むのだった。
今日は冬至。引き受けるなら今しかないと思った。
公開:21/12/22 12:17

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