ゼオライト

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店に入ると金属の臭いがした。
「いい物ないかな」
「掘り出し物あるさ!」
オヤジがいつもの甲高い声で応える。ドラム缶の胴に目玉二つを光らせマジックハンドの右腕で何かを見せる。
「これ、頭にかぶると近づく危険を知る防犯帽子!」
オレは頭にかぶる、ああ、これは何十年も昔に警察車についた点滅ライト。オレが四輪ビヒクル型だといってもこんなの載せて街を歩けるか。
「危険は歓迎さ、要らねえよ」
「じゃ、これはどう?ゼオライト膜加工済み脚。そこらを歩けば地上の粉塵をゼオライトが吸収する」
「それで?」
「街は貴金属の粉体が散らばっている。それを吸収した脚でウチにきたらすっかり落として高く買うよ」
「俺は見ての通り四輪車だ」
「だからこの機会に多足歩行型に改造するのさ。安くやるよ」
オレは点滅するオヤジの目玉を見ながら、多足歩行する多関節型ロボットの自分を思い描いていた。ゼオライト膜付きの何本もの脚で。
その他
公開:21/12/24 15:30

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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