幼き日からの贈り物

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「その内、掃除するとこ無くなるんじゃない?」
「家の中全部綺麗にしちゃう?」
私はすっかり、受験勉強の合間に掃除をする癖がついてしまった。
そんな私が焦らないよう、母は冗談っぽく言ってくれる。
さて次は、と開いた引き出しからコロリと出てきたものがあった。
「なんだっけ?」
砂の入った小さなビンだ。
「懐かしい。昔旅行した帰りに土産物屋さんで買った星の砂ね。」
「そっか、こんなに小さかったのか…」
あの頃はこれがもっと大きく宝物のように見えていた。
よく転ぶ私は、それでも握りしめたコレだけは割らないように気を付けていた。
「ころばないようにね。だいじなものは、こわれないようにね。」
ふと、小ビンを包み込むぷにぷにの手が見えた気がした。
その手は何かをすくい上げると、瞬きながらすっと空に向かった。
「よし、この後もがんばろう。」
少しだけ、小ビンに入るくらいだけど、心が軽くなった気がした。
その他
公開:21/12/24 18:00

ハル・レグローブ( 福岡市 )

趣味で昔から物書きをのんびりやってます。
過去に書いたもの、新しく紡ぐ言葉、沢山の言の葉を残していければと思います。
音泉で配信されているインターネットラジオ「月の音色 」の大ファンです。

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