十を田ずねて

我らが先生の節目と聞き、私も参加せねばと急ぎ筆を取った。
までは良かったが……。

お祭りと言われても、そうそうネタも浮かばない。ここはシンプルに祝辞いや祝字で行こう。
『囗丸先生、　周年おめでとうございます！』
……あれ？
打ち方が悪いのかと再度キーを叩く。
『囗丸先生、　周年おめで』

出ない。
なんてこった。肝心の　の字が……あぁ地の文まで、揃ってとんずらしやがった！
貴様ら何の冗談だ。キーボードを睨むが知らん顔。くだんの　はおろか、算術のプラスまで記号化を拒む有様。
かくなる上はと『Ｘ』をひねり回しても、意地でも直るもんかとへそならぬバツを曲げている。
どうしてくれよう、これではお祭りが台無しだ。今頃ガーデンには、ガーデナー諸氏が工夫を凝らした世界中の　が……

あぁなるほど、そういう事。
ニヤリと笑った私は、原稿用紙にありったけの囗を詰め、久しぶりのガーデンへ現地調達に向かった。