悪魔の鼓動

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ドックン、ドックン・・・。
胎児心拍の波形がゆっくりと、私の胸に低く響き渡る。
「先生、急速墜娩にしましょう。」
「うん、そうだな。」
「関口さん、もう、頭はすぐそこなんだけど赤ちゃん苦しそうだからお手伝いしますね。」
(・・・ママ、僕苦しくなってきた。)
赤ちゃんの心の声が聞こえる。
母親に酸素マスクを装着して体位変換を試みた。
しかし、心拍は回復しない。
「橘君、小児科の先生呼んで。次で出そう。」
次の陣痛で娩出を決断した。
児頭に吸引カップを装着した。
「関口さん、次の陣痛で赤ちゃん出すので頑張っていきんでください。」
そう、この時に悪魔の鼓動が鳴り始める。
(頼むから元気に出てきてくれよ。)
と陣痛と共に吸引カップを牽引した。
・・・。
「オギャー、オギャー、オギャー」
この瞬間、悪魔の鼓動は聞こえなくなる。
(元気に生まれてきてくれてありがとう。)
赤ちゃんに感謝。
ファンタジー
公開:21/12/23 19:00

ひまわり広場( 神奈川県川崎市 )

産婦人科専門医/指導医
@sanadakuma
tama-himawari3w.com
身体は日々の食事で出来ている。
妊婦さんにも食事の重要性について情報提供しています。
ダイエット中の方々にも食事・睡眠・運動の重要性について情報発信しています。
自身が「愛着障害」であることに気付き、もう一人の自分と上手に共生しています。
自分が、自分の『安全基地』になることが生きていくための拠り所なのかもしれない。
科学的な視点からの表現も交えて、ショートショートストーリーを作っています。

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