悲哀

私の時代は、『モーレツ社員』が普通だった。
今でいうパワハラは日常。
自分が昇進したときは、パワハラなどせず物分かりのいい上司になった。
部下から慕われていたはずだ。

あと数年で定年というときに、閑職に置かれた。
今までニコニコしていた部下たちは、私を無視するか陰口を言うか。
「役にたたないおやじだ」と、これ見よがし言うヤツもいた。
「ああ、これが窓際ハラスメントか」
自尊心が傷ついたが、定年まで勤めあげると会社の『シルバー事業部』に雇ってもらえるので頑張った。

今日から『シルバー事業部』だ。
定年した者だけの会社。
居心地いいはずと思ってドアを開けると、私にパワハラした上司が何人もいた。
いや大丈夫。ここでは私がいちばん若いのだ。

「昔人間は、これだからダメだな。パソコンも満足に使えないのか。無能なヤツめ」
私はヤツらにこれ見よがしに言った。
今は、若者が強い時代なんだ。