きこえる

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人の悪意にあてられ、引きこもりとなってしまった俺を両親は何も言わず見守ってくれている。
非情に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。出来る事なら今すぐにでも部屋の扉を開け、感謝の気持ちを伝えたい。
でもそれすら今の俺には難しい。人が怖いんだ…
そして今日も部屋の前に置かれた食事に手を付ける。温かい食事に涙が出る。俺は何て惨めなんだろうと己を責める。
空の食器を出そうと部屋を開ける。糸で繋がった紙コップが置かれいた。
これは糸電話?懐かしい…昔、これでよく両親と話していた。何気なくそれを耳にあてる。
「あまり自分を責めるな。今は心の傷を治す事に専念しなさい」と左の紙コップから父の声。
「何か言いたい事があったらこの糸電話に声を吹き込んで頂戴。私達は貴方の味方よ」と右の紙コップから母の声。
耳ではなく、心に聞こえた声に思わず涙が零れる。
俺は居間へと足を向ける。感謝の気持ちを優しい人に聞かせたいから。
公開:21/12/19 20:27

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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